ガスの可視化装置
(書誌+要約+請求の範囲)
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平6−288858
(43)【公開日】平成6年(1994)10月18日
(54)【発明の名称】ガスの可視化装置
(51)【国際特許分類第5版】
G01M 3/38 7324-2G
3/04 7324-2G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願平5−72676
(22)【出願日】平成5年(1993)3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 富徳
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】金川 俊英
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】隅田 幸一
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】西尾 武司
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区平野町四丁目1番2号 大阪瓦斯株式会社内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修
(57)【要約】
【目的】 簡単な装置構成で、背景を含んだガス漏れの状況に関する画像情報を適切に得て、広域の監視をおこなうことができるガスの可視化装置を得る。
【構成】 ガス漏れ監視対象領域Aの背景から放射、或いは反射される赤外線を検出するイメージセンサ4と、ガス漏れ監視対象領域Aに向けて被検出ガスgに吸収される波長の検出用赤外線を二次元的に照射するレーザ光源3と、監視対象域Aに対応して、ガス漏洩関連の情報を二次元可視画像として表示するCRT6とを備えたガスの可視化装置において、レーザ光源3に、照射赤外線束を集光・拡大し、照射対象領域面積を変更するビームエキスパンダ7を備えるとともに、イメージセンサ4に入射する赤外線束の帯域を、前記検出用赤外線の波長λを概中央位置とする帯域に設定し、前記帯域の幅を変更する透過帯域変更手段9、10が設けて、良好な可視化画像が得られるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ガス漏れ監視対象領域(A)の背景から放射、或いは反射される赤外線を検出する赤外線面状検出手段(4)と、前記ガス漏れ監視対象領域(A)に向けて被検出ガス(g)に吸収される波長の検出用赤外線を二次元的に照射する赤外線面状照射手段(3)と、前記ガス漏れ監視対象域(A)に対応して、ガス漏洩関連情報を二次元可視画像として表示する表示手段(6)とを備え、前記赤外線面状照射手段(3)に、照射赤外線束を集光・拡大し、照射対象領域面積を変更する照射面積変更手段(7)を備えるとともに、前記赤外線面状検出手段(4)に、検出対象領域面積を変更する検出対象面積変更手段(8)を備え、前記赤外線面状検出手段(4)に入射する赤外線束の帯域を、前記検出用赤外線の波長(λ)を概中央位置とする帯域に設定し、前記帯域の幅を変更する透過帯域変更手段(9)(10)が設けられ、前記赤外線面状検出手段(4)のみを作動させて、前記ガス漏れ監視対象領域(A)の背景から放射される赤外線を検出して、検出情報を前記ガス漏洩関連情報として前記表示手段(6)に表示するパッシブ表示モードと、前記赤外線面状照射手段(3)と前記赤外線面状検出手段(4)とを作動させて前記赤外線面状検出手段(4)の検出情報を、前記ガス漏洩関連情報として前記表示手段(6)に表示するアクティブ表示モードとに、表示モードを切り替えるモード切換手段(12a)を備え、前記アクティブ表示モードにおいてアクティブ監視をおこなう場合に、前記透過帯域変更手段(9)(10)の透過帯域を、前記パッシブ表示モードにおける前記透過帯域変更手段(9)(10)の透過帯域よりも狭く設定するガスの可視化装置。
【請求項2】 前記赤外線面状検出手段(4)により検出される検出情報に基づいてガス漏れの発生を判別するガス漏れ判別手段(12)を備えるとともに、通常監視状態にあっては、前記パッシブ表示モードで表示をおこなうとともに、前記ガス漏れ判別手段(12)によりガス漏れと判別された場合に、自動的に前記モード切換手段(12a)が表示モードを前記アクティブ表示モードとする請求項1記載のガスの可視化装置。
【請求項3】 前記ガス漏れ監視対象領域(A)に向けて前記被検出ガス(g)に吸収されにくい波長の基準赤外線を二次元的に照射する基準赤外線面状照射手段(31)を備え、前記基準赤外線の発信強度と受信強度との関係から基準吸収情報を得、前記検出用赤外線の発信強度と受信強度との関係から吸収情報を得、前記吸収情報と前記基準吸収情報との差を被検出ガス濃度情報として導出するガス濃度演算手段(50)を備え、前記ガス漏洩関連情報としての前記被検出ガス濃度情報が前記表示手段(6)に表示される請求項1記載のガスの可視化装置。
詳細な説明
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は工場内におけるタンク、配管等、あるいは道路等に於ける埋設導管や露出導管等、さらには家庭内における屋外や屋内配管等から漏洩する被検出ガスを検出するガスの可視化装置に関する。そして、このようなガスの可視化装置は気密試練時に漏洩するガス漏れ等の検出にも使用される。
【0002】
【従来の技術】従来、工場内のガス漏れ検知においては、監視対象域に複数の検知装置を配設してガス漏れの状況を把握していた。そのため、この方法においては検知が漏洩点の検知に限られるため、例えば工場内の広い区域における漏洩状態(被検出ガスの量、あるいはタンク、配管等の特定位置といった漏洩特定点の位置)を知るためには、数多くの場所にガス漏れ検出機器を設置して、漏れガス状況を把握する必要があった。一方、こういったガス漏れを監視するために、特定のガス漏れ監視対象領域に対して、赤外線を照射して、ガスによるこの赤外線の吸収状態を利用してガス漏れを監視することが提案されている。しかし、この場合は採用される光線が平行光線のため、照射光線を走査する必要があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで、発明者らは比較的広いガス漏れ監視領域を対象として、照射手段により二次元的に赤外線を照射するガスの可視化装置を考えた。しかし、かかる装置では、照射手段を作動させる電力の消費量が大となり、高価かつ大型の大パワーレーザーが必要となる等の欠点が発生する。従って、ガス漏れ監視対象領域の背景から放射されてくる赤外線をそのまま検出して、ガス漏れの状況をCRT等の表示装置に例えば濃淡画像として可視化画像の状態で表示できればよいのであるが、普通の構成の装置においては、背景信号に対するガス吸収情報である検出信号が弱く、表示手段によるCRTでの表示が適切におこなわれない欠点がある。即ち、太陽光等の影響で、日によってあるいは季節によって画像が過度に明るくなったり、暗くなったり、監視対象のガス濃度に対する明暗度の分解能が悪くなったりする。従って、ガス漏れによる赤外線吸収情報を暗い画像信号として含んだ、背景を含む監視対象域の画像を得たとしても明確にガスの存在が確認できない。この状況は、上記の説明のように単に背景から放射されてくる赤外線をそのまま検出する場合、さらには赤外線照射手段を働かせて、赤外線を照射し、背景より放射・あるいは反射してくる赤外線を検出して表示する場合も同様のことが起こる。従って本発明の目的は、簡単な装置構成で、背景を含んだガス漏れの状況に関する画像情報を適切に得て、広域の監視をおこなうことができるガスの可視化装置を得ることにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するための本発明によるガスの可視化装置は、ガス漏れ監視対象領域の背景から放射、或いは反射される赤外線を検出する赤外線面状検出手段と、ガス漏れ監視対象領域に向けて被検出ガスに吸収される波長の検出用赤外線を二次元的に照射する赤外線面状照射手段と、監視対象域に対応して、ガス漏洩関連情報を二次元可視画像として表示する表示手段とを備え、赤外線面状照射手段に、照射赤外線束を集光・拡大し、照射対象領域面積を変更する照射面積変更手段)を備えるとともに、赤外線面状検出手段に、検出対象領域面積を変更する検出対象面積変更手段を備え、赤外線面状検出手段に入射する赤外線束の帯域を、検出用赤外線の波長λを概中央位置とする帯域に設定し、帯域の幅を変更する透過帯域変更手段が設けられ、赤外線面状検出手段のみを作動させて、ガス漏れ監視対象領域の背景から放射される赤外線を検出して、検出情報を前記ガス漏洩関連情報として表示手段に表示するパッシブ表示モードと、赤外線面状照射手段と赤外線面状検出手段とを作動させて赤外線面状検出手段の検出情報を、ガス漏洩関連情報として表示手段に表示するアクティブ表示モードとに、表示モードを切り替えるモード切り替え手段を備え、アクティブ表示モードにおいてアクティブ監視をおこなう場合に、透過帯域変更手段の透過帯域を、パッシブ表示モードにおける透過帯域変更手段の透過帯域よりも狭く設定する構成とされていることにあり、その作用・効果は次の通りである。
【0005】
【作用】上記のような構成のガスの可視化装置においては、赤外線照射・照射停止にかかわらず、赤外線面状検出手段によりガス漏れ監視対象領域を透過してくる赤外線が、背景に対応して二次元的に検出される。この検出情報は、背景情報にガスの吸収情報を含んだものとなっている。ここで、ガスの吸収情報は、被検出ガスに吸収される帯域内の検出用赤外線の波長信号に含まれることとなっており、背景に関する情報は、検出される全ての波長信号に含まれる。そこで、この可視化装置においては、そのガスの吸収情報と背景情報との比が適度に調節されて表示手段側に受け渡すされるように、照射面積変更手段と透過帯域変更手段が備えられるとともに、ガス漏れが発生している可能性がある場合と、ない場合等に対応して適切な表示が可能なように、さらには装置の寿命を長いものとするために、モード切換手段が備えられている。さらに、ガス漏れが発生している場合の監視を特定部位で集中しておこなえるように検出対象面積変更手段が備えられている。以下に夫々の働きについて説明する。
【0006】先ず、透過帯域変更手段について説明する。透過帯域変更手段により検出手段に受け渡される信号の透過帯域幅が変えられる。当然、この帯域内には検出用赤外線の波長が含まれる。ここで、上述の透過帯域幅を変化させると、検出側で検出されるガス吸収に関する情報量はそのままで、背景に関する情報量が変化する。一般に表示手段側においては正規化処理(表示手段側で処理される情報の総量を一定化する。)が、おこなわれるが、本願の装置においては、例えこの正規化処理がおこなわれた状態においても、透過帯域幅を調節することにより、ガス吸収情報に対する背景情報の比を適切なものに調整が可能となり、良好な可視化画像を表示手段に得ることができる。ここで、一般のTV装置においてはゲイン調節装置(図外)が装備されているが、このゲイン調節装置を調節するより、透過帯域幅を変更するほうが可視化画像のS/N比を調整する上で良好に表示状態の最適化が可能となる。図5、図6それぞれに、自然放射状態及び赤外線放射状態における検出波長と各波長成分との関係を示している(それぞれ透過帯域調整無しのもの(a)と、透過帯域幅を制限した場合(b)の信号状態を示し、破線がガス漏れが発生していない場合の状態を、実線がガス漏れが発生して赤外線の吸収が起こっている状態を示している。)。斜線部はガスによる吸収域を示す。即ち、図からも明らかなように、ガスの吸収量に関する情報量(図上、主に斜線部より下の領域に含まれる情報)と、全体の検出情報量(図上、全波長領域における実線より下の領域に含まれる情報)との比が(a)(b)で変化することにより、S/N比が表示に適した比に調節される。
【0007】上述の透過帯域変更手段は赤外線照射手段の作動・作動停止に関わりなく有効に働くが、照射面積変更手段は、赤外線照射手段の作動時に有効に働くこととなる。即ち、照射面積変更手段は、照射される検出用赤外線の領域面積が変えられる。従って、検出手段による監視対象面積が一定の場合は、この領域面積変更により、上述と同様の原理で、ガス吸収情報に対する背景情報の比が変化し、この比を適切なものとして、可視化画像を得ることができるのである。そしてさらに、比較的広い領域をカバーするように大きな視野角で検出用赤外線が照射される場合は、比較的高濃度のガス域が表示手段に表示され、照射面積変更手段により、ある領域に収束して検出用赤外線が照射される場合は、比較的低濃度のガス域まで、コントラストよく表示されることとなる。広領域照射の場合と狭い領域照射の場合におけるガス濃度の検出限界を図7に示した。
【0008】次にモード切換手段について説明する。パッシブ表示モードにおいては、ガス漏れ監視対象領域の背景(たとえば、ガス球形ホルダー等のガス関連施設や、樹木等の自然物)から放射された赤外線を赤外線面状検出手段のみにより検出して、ガス漏れの状況が粗く把握される。そして、粗い精度でのガス漏れの監視状況により危険がある場合は、モード切換手段を働かせてアクティブ表示モードとする。このモードにおいては、検出用赤外線を照射して、背景からの反射赤外線の強度に基づくより精度の高いガス漏れ判別をおこなうことができる。ここで、両モードにおいて、検出用赤外線に乗るガス濃度に関する情報と、検出手段によって検出される全波長領域に含まれる情報との比は、当然、表示手段への受渡し前に調節される必要がある。この調節が、透過帯域設定手段により、アクティブ表示モードにおいて、その透過帯域をパッシブ表示モードの透過帯域より狭く設定することにより可能となる。
【0009】さらに、検出対象面積変更手段は、検出手段による検出領域面積を可変とすることにより、例えばアクティブ表示モードにおける監視を問題の箇所等に限定することができる。
【0010】
【発明の効果】このようなガスの可視化装置においては、背景情報とガスの吸収情報とを含んだ情報を、透過帯域変更手段および照射面積変更手段等を設けて、表示手段に適切に表示できる状態で同時に取り扱うことが可能であるため、装置構成が簡単になるとともに、検出系の構成が非常に簡単になる。従って、使い勝手がよく、廉価なガスの可視化装置を提供できた。さらに、本願のガスの可視化装置を採用すると、瞬時に遠隔位置より漏洩した被検出ガスの漏洩箇所を特定できるので、漏洩原因解明、保全対策を迅速に講ずることが可能となる。
【0011】
【実施例】本願の実施例を図面に基づいて説明する。図1には本願のガスの可視化装置1を使用して、ガス製造工場における球形ホルダー2近辺(球形ホルダー2に接続されている配管のフランジ接続部2a)のガス漏れ監視をおこなっている状態が示されている。即ち、ガス漏れ監視対象領域Aの一例としての球形ホルダー2を背景とする監視地域において、被検出ガスとしての可燃性ガスgの漏洩の有無が監視されている。先ず、本願のガスの可視化装置1に於ける、検出用赤外線の波長λの選定状況及び測定原理について説明する。気体中を伝播する特定の赤外線は、可燃性ガス(被検出ガスg)に吸収される。この関係は、入射光と透過光の強度をそれぞれIiとIoで与えると次式で表される。
Io=Ii・exp[−α(λ)×l×c](ランバート・ビアの式)
ここで、α(λ)はガスの種類や赤外線の波長で定まる吸収係数である。lとcは、赤外線と気体の相互作用の長さと気体濃度を表す。従って、光路上に被検出ガスgがあると、この赤外線は吸収を受け、その強度が弱くなる。これを二次元的に検出してCRT等に二次元的に表示すると、二次元の濃淡画像として表示されるため、ガス漏れ監視領域における被検出ガスgの分布を明らかにすることが可能となる。さて、発明者らは、被検出ガスgとしてのメタン、プロパン、ブタンについての吸収特性を調査した結果、3μm帯に共通の吸収波長があることを確認した。即ち、He−Neレーザ(発信波長3.39μm)を光源とした場合の、それぞれのガスについての吸収係数を実験的に求めた結果を表1に示す。
【0012】
【表1】
【0013】これよりHe−Neレーザを光源として利用すれば、上記の構成で、赤外線吸収を利用したメタン、プロパン、ブタンの可視化が同時に実現できる。例えば、LNG基地では、メタンの他、増熱用にプロパン、ブタン等が使用されるので、同一機器でこれらの漏洩ガスの監視ができることは機器コストの面で大きな特徴となる。本願のガスの可視化装置1の詳細構成について、図2に基づいて説明する。このガスの可視化装置1は、監視対象のガスである例えばメタン、プロパン、ブタンといった可燃性ガスgによって吸収される波長の検出用赤外線を二次元的にガス漏れ監視対象領域Aに照射する赤外線面状照射手段としての赤外線レーザ3(レーザ光源を3aとする)と、前記監視対象領域Aを透過して前述の背景より放射、あるいは反射してくる赤外線を検出する赤外線面状検出手段としてのイメージセンサ4を備えて構成されている。さらに、このイメージセンサ4からの検出情報を演算・処理する演算処理手段5が設けられるとともに、処理された後のガス漏洩関連の情報を、二次元可視画像として表示する表示手段であるCRT6が設けられている。即ち、この構成を採用することにより、イメージセンサ4によって検出される検出情報が、演算処理され、ガス漏洩関連情報として、CRT6に表示され、監視者の監視作業の用に供されることとなる。図3にCRT6による表示状況が示されている。
【0014】本願のガスの可視化装置1にあっては、イメージセンサ4のみを作動させて、ガス漏れ監視対象領域Aの背景から放射される赤外線を検出して、検出情報をガス漏洩関連情報としてCRT6に表示するパッシブ監視モード(この状態の表示モードをパッシブ表示モードと呼ぶ)と、赤外線レーザ3とイメージセンサ4とを作動させるとともに、その検出情報をガス漏洩関連情報としてCRT6に表示されるアクティブ監視モード(この状態の表示モードをアクティブ表示モードと呼ぶ)との間で、作動モードが選択可能に構成されている。これらの両モードに於ける監視対象領域の差を図4(a)に示す。
【0015】この構成のガスの可視化装置の課題は、赤外線レーザ3の出力とイメージセンサ4の感度の向上にあり、この課題に対して本装置では、以下にのべる照射面積変更手段としてのビームエキスパンダ7、検出対象面積変更手段としてのズーム機構8、バンドパスフィルタ9と切り換え機構10を備えた透過帯域変更手段を採用して解決を図っている。
【0016】以下、各機器の構成について順次説明していく。
【0017】イメージセンサ4は、ガス漏れ監視対象領域Aの背景である球形ホルダー2等のガス関連施設や樹木等の自然物から放射され、或いは赤外線レーザ3により照射された検出用赤外線のうち反射された赤外線であって、ガス漏れ監視対象領域Aを透過した検出用赤外線と、この検出用赤外線の波長を含む帯域の赤外線の強度を検出するものである。これは、前述のパッシブ監視モード、アクティブ監視モードの両状態において使用される。そして、その本願特有の複数のバンドパスフィルタ9と切り換え機構10を備えた透過帯域幅変更手段を備えるとともに、ズーム機構8を備えている。このズーム機構8を働かせた場合の画像を図4bに示す。ここで、このイメージセンサ4は、パッシブ監視モードにおいて、監視対象ガスの赤外線吸収スペクトル幅が十分広い場合には、プランクの放射則による背景物質の赤外線放射光を光源として用ることができる。そして、前述のバンドパスフィルタ9をイメージセンサ4の前に配設して、信号のS/N比(ガス濃度を主に代表する検出用赤外線の強度をSとし、主に背景を代表する検出用赤外線の波長以外の波長の信号をNとしている)を向上させる構成が採用されている。従って、バンドパスフィルタ9を経てイメージセンサ4へ入射する透過波長の透過帯域幅(半値幅)は、イメージセンサ4にとって十分な光量が得られ、かつガス検出のためのS/N比が高い値として選択される。 さらに、詳細に上述のバンドパスフィルタ9の選択・設置原理について説明する。パッシブ監視モード、アクティブ監視モードにかかわらず、単一のバンドパスフィルタ9を用いた場合には、前記CRT6に於ける表示画面が太陽光等の影響で過度に明るくなったり暗くなったりする。さらに、同一の明度でCRT6上に画像が表示されている状況においても、監視対象のガス濃度に対するCRT画面上での明度差が低く、例え表示されたとしても明確にガスの存在が目視確認できない等の問題が起こる。このような問題を解決するためには、バンドパスフィルタ9としては、背景の熱放射光と昼間の太陽反射光エネルギーが赤外線イメージセンサの感度に比べて充分であって、かつ検出対象ガスの吸収量のS/N比がとれるような半値幅を備えたものが選択さるべきであるが、太陽光エネルギーの変動は大きいので、この半値幅を一定にすることは難しい。そこで、CRT6における表示を適切な明度に整えるとともに、コントラストよいものとするために、透過帯域変更手段を備え、太陽光と背景の熱放射の変動を考慮してバンドパスフィルタ9を交換することによって、バンドパスフィルタ9の半値幅を可変に構成してある。
【0018】さらに、被検出ガスgを可視化した場合、漏洩ガス量が少ないとガスのイメージサイズが小さい場合もある。このような場合は、ズームアップによる局所的な確認が必要となり、反対に漏洩量が多いと局所的な監視では対応できなくなる。従って、イメージセンサ4の受光側にズーム機構8を備えて、監視の視野角は可変とされている。
【0019】また、イメージセンサ4の蓄積時間をセンサの感度調整に利用する。特にS/N比を向上させるためバンドパスフィルタ9の透過帯域を狭くした場合、センサで検出する光量が不足して画面輝度が十分に取れない場合がある。その際は画面輝度が飽和しない範囲で蓄積時間を増やして、画像の輝度を確保する。即ちイメージセンサ4には、蓄積時間制御手段4aが備えられている。
【0020】以下に、検出用赤外線の照射側について説明する。この系には赤外線面状照射手段としての赤外線レーザ3、照射面積変更手段としてのビームエクスパンダ7が備えられている。赤外線レーザ3は被検出ガスgに吸収される波長に波長が一致しているもの(検出用赤外線)が選択されるとともに、レーザ出力は、監視したい領域Aにレーザを拡大させた場合のレーザによる背景反射エネルギーが、背景熱放射エネルギーと昼間の太陽光による背景反射エネルギーの和にくらべて、小さくならないように決定されている。即ち、夜間は勿論、昼間においても十分に検出用赤外線の光量が確保できるように構成されている。さらに、背景や太陽の影響が大きすぎて、検出用赤外線が相対的に検出しにくい状況を避けるために、単位面積あたりのレーザ反射光強度を変更する目的で、レーザの拡大範囲を変更可能なビームエキスパンダ7が備えられる。ビームエキスパンダ7は、通常、平行光線をつくるように設計されるが、本システムでは拡散光でよいため、それほどの精度は要求されず、安価なものとできる。イメージセンサ4は距離によって監視範囲が変化するので、赤外線レーザ3が平行光では背景までの距離が増えると監視画面上のアクティブ監視状態による監視領域が狭くなり、認識性が低下する。従って、拡大角度はイメージセンサ4の視野角よりも小さい範囲で可変とされている。また、本システムではレーザはマルチモード発振でよい。即ち、波長3.39μmのレーザでは、マルチモード発信帯域は300メガHzと狭帯域であるため、メタンの吸収帯域内に含まれ、マルチモード発振で得られたレーザ光をそのままビームエキスパンダで拡大させて使用できる。従って、通常のレーザ発振装置のようにマルチモード発振で得られた多数波長を含むレーザ光をフィルターにより単一波長のする必要はなく、結果としてレーザー出力を上げることができる。さらに、イメージセンサ4の応答速度と同期できればパルスレーザでもよい。
【0021】以下、CRT6に表示される濃淡画像の形成について説明する。これまで説明してきたように、CRT6に表示される画像は監視対象地域Aの背景の画像情報と、被検出ガスgの漏洩状態の情報画像の両方が混在した情報である。そして、ガス漏れ監視対象領域Aに被検出ガスgがあると、このガスgに検出用赤外線が往路(アクティブ監視モードのみ)及び復路において吸収され、場所によってはガスg濃度が異なるため、吸収の差により検出用赤外線に空間的な(二次元写像とされた場合の異なった位置で)濃度差を生じる、この受光情報が、本願の装置においては背景情報をグランドとする濃淡画像としてCRT6に表示される。従って、作業者は自ら目視により監視対象域の背景とガスgの分布をCRT6で確認することができる。さらに、一般に背景は静止しており、被検出ガスは流動するため、異なった時間の画像情報を比較することにより自動的にガス漏れを検知することもできる。
【0022】以下、本願のガスの可視化装置1に備えられるガス漏れ判別手段12、モード切換手段12a、赤外線照射制御手段13について説明する。これらの手段12、12a、13は、演算処理手段5とともに備えられる。ガス漏れ判別手段12は、各設定時点における検出情報を比較してガス漏れの有無を判別する処理系を備えている。即ち、このようなガス監視を必要とする場所においては、背景は一般に静止しているのに対し、漏洩した被検出ガスgは流動する。従って、異なった時間における画像情報を画像間比較することにより、ガスの漏洩の状態を把握する。この状況(異なった時刻のガス分布が二重表示されている。)が前述の図3に示されている。
【0023】モード切り換え手段12aは、上述のガス漏れ判別手段12によりガス漏れと判別された場合に、パッシブ監視モードからアクティブ監視モードへと切り替える制御をおこなう。即ち、赤外線照射制御手段13を働かせて赤外線レーザ3を作動させるとともに、透過帯域変更手段9、10を作動させて透過帯域の変更およびビームエキスパンダ7により照射面積を狭くし、特定のガス漏れ場所を集中監視する。パッシブ監視モードと、アクティブ監視モードでの検出状況を比較すると、パッシブ監視モードにあっては、イメージセンサ4で検出される真に必要な赤外線の強度信号は、背景情報を主とするから、バンドパスフィルタ9として検知波長帯域がより広い帯域のものが選択される。一方、パッシブ監視モードで濃淡を表現すべく正規化される処理系に対して、アクティブ監視モードで背景から反射するエネルギーの大なる検出用赤外線を検出すると、波長が検知波長付近での強度信号は一定値以上で飽和して濃淡が識別できなくなる。そこで、前述のモード切換手段12aの制御により、通常は帯域の広いバンドパスフィルタ9に設定してS/N比を下げた状態とし、赤外線レーザ3を作動させる場合に、透過帯域変更手段9、10により帯域の狭いバンドパスフィルタ9に切り換えることで、どの程度のガス漏れであるかを詳細に検出すべくS/N比を上げるように構成してある。この透過帯域の変更状況が図5、図6に示されている。
【0024】以上に説明したガスの可視化装置1における各要素の諸元を箇条書きする。
赤外線レーザ3レーザー型式 ヘリウム−ネオンレーザー公称出力 8mW中心波長 λ 3.39μm、バンドパスフィルタ9の幅 a+b 0.1〜2μmここで、a,bは任意に設定される。
a+bの例太陽光照射状態の昼間、アクティブ方式、対象ガス;メタンa+b 0.1〜0.2μm太陽光照射状態の昼間、パッシブ方式、対象ガス;プロパン、ブタンa+b 1 μm夜間 パッシブ方式、対象ガス;プロパン、ブタンa+b 2 μm視野角 イメージセンサの視野角背景との距離 数m〜数100mイメージセンサ4検知波長域 3μm〜5μm最大検知温度差 0.15℃以下(NETD)
【0025】以下に、本願のガスの可視化装置1の働きについて説明する。
(1)パッシブ監視状態ガス漏れ監視対象領域Aの背景から放射された赤外線(輻射熱)をイメージセンサ4により検出して、ガス漏れ判別手段12によりガス漏れの有無を粗く判別する。この状態においては、S/N比の向上をめざして、バンドパスフィルタ9の半値幅は、背景が監視に必要な最小限の明るさで確認できる程度の光量となるように操作される。この時バンドパスフィルタの透過帯域は、比較的広く選択される。
(2)ガス漏れ判別手段12は、ガス漏れの発生があれば、特定の波長の赤外線が吸収されている領域が時間的に位置移動していくことを利用して、特定の波長の赤外線の吸収領域が二次元的に移動している場合にガス漏れが発生していると判別する。
(3)ガス漏れ判別手段12による粗い精度でのガス漏れの発生が判別されると、赤外線照射制御手段13は、背景に向けて検出用赤外線を照射して、背景からの反射赤外線の強度に基づくより精度の高いガス漏れ判別を可能にすべく、赤外線レーザ3を作動させる。
このとき、ビームエキスパンダ7と透過帯域変更手段9、10の自動調整により、透過帯域を絞って、CRT6へS/N比の高い状態で、画像信号を送り、確実な可視化情報を得て、CRT6に表示する。
【0026】〔別実施例〕本願の別実施例を以下に箇条書きする。
(イ)上述の実施例においては、赤外線レーザ4により照射される検出用赤外線を単一光とし、この検出用赤外線として可燃性ガスgにより吸収される波長のものを選択したが、こういった波長の検出用赤外線とともに、前記ガスgには吸収されにくい波長の基準赤外線による照射系(これを図2に破線で示す30は基準赤外線照射制御手段で、3bは基準赤外線のレーザ光源である。これらを合わせて基準赤外線面状照射手段31と呼ぶ。)を設け上記の実施例の検出系に付加して設け、ガスに吸収されない波長の赤外線による情報を基準情報とし、吸収される波長による画素の情報をガス漏れ情報とすると、ガス濃度の検出も可能となる。即ち、基準赤外線の発信強度と受信強度との比の対数からランバートビアの式に従って基準吸収情報を得、検出用赤外線の発信強度と受信強度との比の対数から、同様に吸収情報を得、吸収情報と基準吸収情報との差を被検出ガス濃度情報として導出するガス濃度演算手段50を備え、ガス漏洩関連情報として被検出ガス濃度情報がCRT6に表示されるものとしてもよい。この場合は、ガス濃度まで確定することが可能となる。
(ロ)ガス漏れ判別手段12は、上記の構成の他、イメージセンサ4の検出情報に基づき被検出ガスgに吸収される波長の検出用赤外線の強度からガス漏れの有無を判別するものとしてもよい。即ち、ガス漏れ判別手段12を、イメージセンサ4により検出対象とされる監視対象領域Aに対応した二次元領域上の各検出点に於ける吸収情報のうち所定の閾値(例えば、正常状態の背影を代表する値をこの閾値とする。)より大なるガス濃度の領域がある場合に、ガス漏れが発生していると判断するものとしてもよい。
(ハ)さらに、監視対象領域の背景としては、前記球形ホルダー2の他、地面、コンクリート壁、塗装済の鉄骨構造物等でもよく、さらに特定域についてはスクリーンを備えてもよい。
【0027】(ニ)さらに、監視対象域が広い場合は、レーザー光の照射域を監視対象域に対して移動させて監視することもできる。
【0028】先の実施例では、赤外線照射手段にレーザー発振器を用いているが、光源としてレーザー発振器に限定するものではない。
【0029】尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
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